イタリアにおけるエンジニアの地位
イタリアに住むまで知らなかったけど、イタリア人ってかーなり学歴重視で肩書き好き。
イタリアで語学学校に通い始めた頃、当然出会う人は皆知らない人なので、よく日本では何をしてたんだ?という質問をされました。 ロクに喋れないイタ語で難しいことは言えないので、ただ「エンジニアやってました」 と答えてたんですが(まぁウソじゃないし)、そうするとその場の空気が変わるのを感じたものでした。 初めは、あれ?なんか間違った?と思ってたんですが、その後必ず聞かれるのは、大学では何を専攻していたか ということ。イタ語で工学部はIngegnere (英語のエンジニア)なので、電子工学 と答えると、ほぼ100%の確率で頭の先から足元まで舐め~るように見られます。 後からわかったのは、イタリアでエンジニアというのは、医者(dottore=英語のドクター)と同様の地位なのだとか。 もうだいぶ前、友達とその友達数人でバールでだべっていて、友達が私を指して「この子イタリアで仕事探してるんだけど、何かない?」みたいな話になったとき。 私とは初対面だった女の子が鼻で ふっ と笑い(←ホントに”ふっ”って聞こえた)、「こんなイタリア語もロクに喋れない子雇うくらいだったら、会社は私を選ぶわよ」と。 その日は熱っぽい中ムリヤリ友達に連れ出され、その場に居るのがやっとでほとんど口を開いてなかったので、イタ語がほとんどわかってないと思って言ったのかもしれないけど、正直カチンときたものの、彼女が言うことは正論。 「まー、そーだよねー」と応えようとした時に友達が一言。 「でもこの子、エンジニアよ」 と。 したっけさっきの子、私のことを上から下までまさに舐め~~~るように3往復くらい眺め、「あなたが?本当にエンジニアなの?」と。その後はお決まりの「専攻は何?」という質問。一通りお決まりの質問攻めにあった後、「じゃぁ私には無理ね、ごめんなさい」と。 ・・・なんなんだ、その態度の違いは。 だいたいエンジニアの一言で片付けるけど、仕事する上で大切なのって、何を学んできたか ではなくて 何ができるか だと・・・、言われませんでしたっけ?日本では。 でもイタリアだとこういう話って一切でない。工学部出たイタ人も、自分はエンジニアだ と事あるごとに主張はするものの、実際の仕事はお粗末な人も多々居るわけですよ。 日本も昔は学歴社会があったし似たようなものだったのかもしれないけど、でもイタリアって日本のように学校によるレベルの差もあまり無いようだし、まさに何を専攻していたか という点のみ重視という感じ。それに前にも書いたように、大学卒業するのに10年近くかかってる人とか山のように居て、それで何が判断できるんだろう と。 それにねぇ、人の興味や得意分野ってそれこそ人それぞれだし、昔から語学が先生もサジ投げるほど苦手だった私からしたら、学歴なんかなくても、○ヶ国語喋れます ってほうが、よっぽど尊敬に値するんですよね、ホントに。。。 こういうのって、理系分野に長けてないイタリアだからこそなのかもしれないけど。 おそらく男女比を考えなければ、大学卒業者の半分近くが理系に分類されるのでは?という日本の常識から考えると、文学部だろうが工学部だろうが、それが何?って気がするんですけどねぇ。 だいたい私なんて大学卒業したのなんてあまりに昔で、やったことなんて全然覚えてないし。:p それとこれは日本で働いてたときに会社の先輩と話してたことだけど、今の世の中、知識や情報なんてもんはネットだの本だの人からだのといくらでも取り出せるわけで、要は必要な時に必要な情報を、『どこからどうやって取り出せるか』 というポインタとその使い方を知ってるほうが重要だろう と。 私なんてもう脳内メモリーがお酒で溶けてて多くのことを記憶できないので、必然的にこういうポインタしか持てないわけなんですがね。。。 でもイタリア人のエンジニアって、色々知識はあるけれど、それを使えない人が(歳いった人には特に)多い って思うことがあります。 色々うんちく並べてくれるけど、うんちくはいいからその知識を総動員して問題を解決してくれ というと・・・、それは自分の仕事じゃない って感じで逃げたり。 いや、それがアンタの仕事でわ? と。 いいのか悪いのか、イタリアにもこういう状況を不満に思う人はいるようで、最近イタリアでは実力のある若いエンジニアはどんどん海外に出て行ってしまい、イタリアには残らないのだそうで。 それをみたイタリア人は『よくない傾向だ』とは言うものの、じゃぁ根本解決する気があるのか というと、そんな気はさらさら無いみたいだし。。。 実力社会が絶対的にいい とは思わないけど、でも実力ある人にとっては、それを評価してくれるところに行きたくなるのは、そりゃ仕方ないですわな。 日本だとプログラマやSEなんかのエンジニア職って、3K(キツい、給料安い、帰れない)と言われて誰も羨ましがらない なんて話を聞くと、エンジニア(=工学部卒)ってだけで半ば崇拝され高給もらえるイタリアというのは、ある意味エンジニア天国なんでしょうけどねぇ。。 日本のハード・ワークに疲れたエンジニアさんは、イタリアに新天地を求めてみるのも手かも? あ、でも、外国人ってことで他のイタリア人より待遇も給料もものすごーく低くなるので、総合的にみたら全然おいしくないかも。ダメじゃん。。。
by maccarello
| 2008-07-29 02:18
| イタリアーナへの道
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Comments(8)
私も「エンジニア」って聞くと「すごーい!」と思ってしまう
理系ダメダメ人間なんですけど、確かに一口に「エンジニア」といっても 色々だし、日本で働いた経験からいうと、学歴が高かったり、お勉強ができた人ほど、頭でっかちで、実務やらせると他の状況に対応できない マニュアル人間の確率も高いですよね(笑)。 イタリアで「ポリテクニコ」に通ってるっていうだけで凄いなと思うけど、 問題は卒業して、社会に出てどんなことができるか、が大事だと私も思います。 お医者様にしてもエンジニアにしても優秀な人は皆海外に出ちゃいますよね…(-_-)。映画、「La meglio gioventu’」で主人公が医学部の卒業試問のとき、教授から「いい医者になりたいなら、外へでなさい」みたいな事を言ってたシーンがあって、内心「いいのか?そんなこと言って」と 複雑だったことがあります(笑)
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私もtoscaさんと同じ!!超文科系(それも国文科卒)の私にしてみれば、理科系、それも工学部とか電子工学関係の人ってそれだけで尊敬しちゃう。
なんか、すごーくマンガチックなたとえで恐縮だけど、ロケットとか作ってそうな感じがする。 これもtoscaさんが書いておられるとおり、最近日本でも、優秀な人材はみんなアメリカあたりに行っちゃうっらしいですけれどね。 ほら青色発光ダイオードを開発した人が、正当な報酬の対価として56億円だっけ、560億円だっけ?とにかく莫大な金額の裁判を起こしたみたいに、日本企業にいる限り、素晴らしい成果を挙げても、一時金100万とかせいぜい1000万とかそれぐらいしかもらえなかったりするから、(その代わり会社が作った施設で研究できるし、成果を挙げていない間も給料がもらえるけれど)そういうことに我慢できない人が海外にいっちゃう例が増えてるみたいですね。 以前、イタリアのサピエンツァ大学で、アンチエイジングの研究をしている教授にインタビューをしたことがあるんですけれど、イタリアで研究をすることは拷問と同じだ。って言ってました。なんか話題がずれたけど、やっぱり理科系はカッコイイと思う私です。
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kndchk
at 2008-07-29 17:58
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確かに、エンジニアといっても色々あるけれど、建築と同じで大学出たては お偉いエンジニアの事務所で下働きさせられてこき使われても月に500ユーロとかいうのも当たり前らしいし、それでもエンジニアの仕事ができるだけ幸せっていう感じみたいですね。そっから一本立ちした人は偉くなるんだろうけど。
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maccarello at 2008-07-30 01:47
toscaさま:
そうそう、それを言ったら日本だって同じ部分もあるんでしょうけど、 なんかイタリアは特にエンジニアに対してそれが強いような気がして。 日本だと、政治家や医者に対してはそういうのありますけど、それらと 同レベルに扱われる ってのーがどうもしっくりこないっていうか。。 実際そうやって「すごーい」って言う人は、何がすごいのかもわかって なくて、ただのイメージで言ってるんだろうなー と思うと余計に。 日本だとそれが、実際は3Kなんだよー とかばれちゃってるけど^^; その映画は見たことないですが、そうやって映画の中でも言われちゃうん ですねー、たしかにびみょー。。。 そうやって外に出て修行した後で、イタリアに戻ってきて ってならいいんでしょうけどね、国のためには。
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maccarello at 2008-07-30 01:54
がっちゃんさま:
それを言ったらですね、私からしたら、何ヶ国語を普通に扱う人や、 読めない日本語(古文とか)を解する人とか、書類整理がぱぱっとできる 人とかってすっごく尊敬ですよ。 まー、お互い、隣の芝生は青く見えるってヤツなのかと。。 しかし、イタリアで研究するのは拷問だ って、報われないって意味なんでしょうか?
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maccarello at 2008-07-30 01:57
kndchk さま:
イタリアのエンジニアと言っても様々なんでしょうし、若い人は賢くて やる気もあって って人が多いとは思うんですけどねー。 なんかこの、エンジニアも医者も一緒っていうこのイタリア世間の風潮に なんか大きな疑問を持たずにいられないんですよねぇ。。。 エンジニアの職自体は、好きならとてもやりがいがあって面白い仕事だと 思うんですが、なんかその「エンジニア」って地位に甘んじて、大学卒業 しただけで満足して自己啓発ゼロでいい歳まできちゃいました って人も 多い気がしてなんだかなー と。。。
この記事、興味深く、何度も読んだんだけど、イタリアにおけるエンジニアの地位というより、イタリアという国ではアレなのかね、人を判断する上で肩書きがとても重要ということなのかなぁ。
他の職業についてはどうなの? 逆に蔑まれるとか。 あるとしたら、とても意外。
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maccarello at 2008-08-01 01:22
肩書きや学歴がそれなりにある人は、それをすごーく主張するね、イタリア人。
メールのシグネチャーにも長々とドクターだのエンジニアだのマネージャーだのと書きまくり。 それにそういう称号(?)で相手の対応がかなり変るのも実感してます。 私なんて当たり前だけど見た目中国人と(イタ人には)区別つかないから、初めて会った人の対応なんて、この中国人ダレ?みたいな感じで半ば無視だけど、誰かが「この子エンジニアなのよ」とか言ったとたんに急にいろいろ喋りかけて来る人とか、対応が丁寧になったり ってのは、よくある。 これは印象だけど、友達からしても、友達がエンジニアってのは自慢なのか、事あるごとにそこを強調されたりして、正直恥ずかしい。そんな大したことやってきてないし、できないし、大学レベルもたいしたことないのに。。 職業については、蔑まれるとまでは行かなくても、工場のラインで働いてるのと開発にいるのとでは、対応が違うと思う。 ずっとラインで働いてるんだと思ってたって人が、そうじゃないってわかったとたんに急に態度変ったり。 あと、掃除婦みたいな仕事はイタ人やりたがらないみたいで、外人が多い気がする。 |
イタリアのトスカーナ、マルケ、スペインのバルセロナと周って、8年ぶりに戻った日本は信州から。
by さばぇ
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